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標準的な投資理論によると個別証券やポートフォリオの総リターンは市場関連リターン(システマティック・リターン)と非市場関連リターン(アンシステマティック・リターン)との合計となります。
市場関連リターンとは市場全体のリターン(市場収益率)に連動する部分、一方、非市場関連リターンとは個別証券・ポートフォリオに国有の要因によるリターンのことです。
そして、市場収益率との連動性(感応度)をβ(ベータ)、固有のリターンをα(アルファ)と呼びます。
ヘッジファンドへの要請である「市場変動に連動しない絶対リターンの追求」とはすなわち「ベータ部分をコントロールしつつアルファ部分を極大化すること」と言い換えられます。
ではどのようにベータ部分をコントロールするのでしょうか。
それは通常の投資手法である買い持ち(ロング)に加えて、売り持ち(ショート)をも組み合わせることが基本となります。
今後の相場下落が予想される環境において、通常の買い持ちだけ(ロングオンリー)の場合、できることと言えば買い持ち額を減らすことに限られそこからプラスのリターンをあげることは困難です。
これに対したとえば空売りやデリバティブの活用によりショートポジションを築くことで相場の下落局面でも収益機会が生まれるのです。
ちなみに、最近の研究も「ロングオンリー制約」がアクティブ運用の効率性を大きく阻害する可能性があることを指摘しています。
ロングオンリーでは運用担当者のネガティブな予測をポートフォリオの構築に十分反映することができないためですが、こうした研究成果をも背景にも一定の範囲(たとえば投資金額の30%以内)でショートポジションを採用し効率性の改善を図る運用戦略が実務面でも注目されているところです。
なお、投資信託のうち、アルファを狙わずベータにのみリターンを依存させるのが「インデックスファンド」、ベータも維持しながら超過収益としてのアルファをも狙うのが通常の「アクティブファンド」と言えます。
ただ、ヘッジファンドについてもベータ部分をゼロにするばかりではなく相場観によってはベータ部分も積極的にとりにいくこともあります。
そうした柔軟性がヘッジファンドの強みなのです。
アルファをどのように獲得するかなどの観点からヘッジファンドの代表的な投資戦略として一般に以下のようなものが挙げられます。
ただ、個々のヘッジファンドが実際に採用する運用手法はそれほど単純に割く切れるものではなく以下の大まかな類型はあくまでも便宜的なものにすぎません。
また、複数の手法を用いる「マルチストラテジー」戦略のヘッジファンドもありなお、過去実績によると各戦略別のリスク・リターン水準には大きな差異が生じています。
また、景気の局面によっても戦略ごとのパフォーマンス格差が生じます。
たとえば、景気の好調なときには株式ロング・ショート、イベント・ドリブングローバル・マクロなど景気後退期にはマーケット・ニュートラル、マネージド・フューチャーズなどがそれぞれ相対的に好パフォーマンスを示す傾向を持っています。
よってそもそも「ヘッジファンド」と、すべてを総括して語ることは必ずしも妥当でない場合もあります。
そのためヘッジファンド投資を検討するにあたっては各戦略の特色を把握しておくことが大切です。
さらに言えば同じ戦略に分類されるヘッジファンドでもマネージャーの運用巧拙などのため、パフォーマンスにかなりの差が生じることも珍しくありません。
ヘッジファンドとは市場変動よりもマネージャースキルへの依存度が高いファンドであるからには当然のことですが、そのようにヘッジファンドでは運用手法やパフォーマンスにおいてそれぞれの個別性が色濃く現れます。
最近、サブプライム問題による市場混乱もあり、ヘッジファンドの破たん事例がしばしば話題となります。
しかしそうした報道に触れた場合にも通常はあくまで特定の個別ファンドの話でありヘッジファンド全体を危機に陥れるようなものではないと判断すべきでしょう。
割安株(過小評価されている銘柄群)のロングポジションと塾尚株(過大評価されている銘柄群)のショートポジションを併用することで絶対リターンを追求する伝統的な手法です。
必ずしもベータ部分を完全に消去するわけではなく多くの場合、ロングポジションの方がショートポジションよりも大きい「ネットロング」となっています。
高度な金融工学的・統計学的技法を躯便してベータ部分を排除し、アルファ部分を極大化することをめざします。
その名のとおり、市場リスクをとらない(市場変動に対し中立)ことが特徴で市場中立型戦略とも呼ばれます。
通常の市場環境下ではヘッジファンドの戦略のうちでも特に低めのリスクと安定的なリターンを特色とし、また、伝統的資産クラスとの高い分散効果が期待できます。
アービトラージ(裁定取引)債券アービトラージ、CB(転換社債)アービトラージなど裁定取引により絶対リターンを追求する戦略です。
つまり互いに関連する二つの資産の間で一時的に価格形成の歪みが生じた場合、割安な方を買い、割高な方をショートします。
そして、両者の価格が収れんし割安・塾尚が解消する過程(割安な方が上昇、割高な方が下落)でそれぞれの反対売買によりリターンを確定します。
ただ、効率的な市場では通常、価格の大きな承離は生じにくいため、小さな歪みを効率的に活用すべく多くの場合、レバレッジが用いられます。
世界の経済体制・政治情勢をマクロに分析しそこに存在する歪みやトレンドを捉えて機動的に資金を移動させ予想適く歪みが修正される過程で大きな収益を得ることを目的とする、トップダウン・アプローチによる手法です。
対象市場は株式、債券、金利、通貨、商品など多岐にわたります。
合併・買収、清算や破産といった企業の「イベント」に着目しこれに関連して生じる価格修正を捉えることを目的とします。
たとえば企業買収では、買収会社の株価が下落し被買収会社の株価が上昇することが多いため、この場合、前者の株式をショートし、後者の株式をロングすることでその後の価格収れん過程におけるリターンを獲得します。
前節でも説明しましたがこれは先物取引による戦略で株式ロング・ショートとともに長い歴史を持っています.通常、この戦略のファンドは「cTA」と呼ばれますが投資対象は商品先物に限らず株式、債券、金利、通貨といった金融先物も含むあらゆる上場先物市場です。
多くはうテクニカル分析に基づき先物市場のトレンドを捉えることを目指します。
トップダウン・アプローチを重視することからグローバル・マクロとの類似性も見られますが、投資先が先物市場に限定される点が異なります。
以上のようにヘッジファンドの投資戦略は極めて多岐にわたっていますがこれらの運用手法は必ずしもヘッジファンドのみに開かれているわけではなく精度を別にすればはかの投資家でも(単純なロング・ショートであれば個人投資家でも)用いることができるかもしれません。
つまりヘッジファンドといえども、多くの場合、複雑かつ高度ながらも周知のスキームを用いて絶対リターンを追求しているにすぎません。
それでは他の投資家と何が違うのでしょうか。
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